「魚突きをやってみたいけど、何から始めればいいか分からない…」といった方に対し、この記事では必要な道具や場所の探し方、違法となるケースなど、魚突きの始め方に関する情報をまとめて紹介します。
魚突き(スピアフィッシング)の始め方
マリンスポーツや魚が好きな人であれば、魚突きは非常に魅力的なアクティビティとなります。その反面、準備する道具が特殊であったり、インターネットに情報があまり載っていないこともあって、始めるまでの敷居が高くなっています。
まず、魚突きを始めるうえで「必要となる道具は何か」、「何をしたら違法になるか」、「どの様な危険が潜んでいるか」といったことを事前にしっかりと理解しておくことが大切です。
できれば最初は経験者に教えてもらえると非常に安心できます。というのも、魚突きは地域によって海の状況や漁場のルール( 水深や生息している危険生物、採捕してはいけない魚海藻類など)が異なるからです。
経験者の同行が難しい場合は、この記事で最低限の知識を身に付け、自分の能力を過信せず地元の漁師や魚突きをしている方に話を聞きながら始めていきましょう。
魚突き(スピアフィッシング)に必要な道具・装備
魚突きを始めるうえで必要となる道具を紹介します。重要だと思われる順番に書いていきますが、各道具の用途を確認したうえで必要だと思った道具を購入してください。
手銛(テモリ)
魚突きで最も重要なアイテムといえるのがこの手銛です。ポールの端に付いているゴムを銛先の方向に引き、手を放した時の弾性力で手銛を発射する仕組みになっています。
初心者は短くて安い手銛から始めましょう。手銛は長いと遠くの魚を狙えるため有利になりますが、扱いづらく初心者には不向きです。また、魚突きに慣れないうちは、高額な手銛を購入する必要もなく、以下の様な安い手銛がおすすめです。
シュノーケルマスク
シュノーケルマスクも魚突きをするうえで必須のアイテムとなります。シュノーケルとは呼吸用パイプのことをいいます。また、マスクも普通の水泳用ゴーグルと違い、鼻がふさがれているため口呼吸がしやすくなっています。
魚突きにシュノーケルマスクを使う理由は、顔を沈めた状態で海中を一定時間見渡すことができるため、魚を探しやすくなるからです。最近ではフルフェイスタイプもありますが、おすすめは以下のような通常のシュノーケルマスクです。
ダイビンググローブ
忘れがちですが、ダイビンググローブは絶対にあった方が良いアイテムです。ダイビンググローブを使うメリットは、手銛のゴムを引くときポールから手が滑りにくくなることです。また、毒を持っている生物や海藻を誤って触ってしまった場合の備えにもなります。
初心者のうちはグローブが分厚いと操作性がなくなり、手銛などの扱いが難しくなるため、1.5~2.0mm程度の厚さにしましょう。以下のグローブは滑りにくく厚さが丁度いいだけでなく、価格も安いのでおすすめです。
フロート
魚突きでは荷物を積んだり、突いた魚をくくりつけておく浮き輪のようなフロートと呼ばれるものを使用します。付属のフロートラインを手銛の端にあるゴムの接続部に結び、引っ張りながら泳ぎます。
フロートは何かを積載する用途だけでなく、万が一の緊急事態でもしがみつくことで救命具の役割を果たすため、初心者でも深水のある場所で魚突きをする方はできる限り用意しておきましょう。
選ぶ基準としては、第三者から発見されやすい目立つ色であることや、荷物が多く収納できる積載性がポイントになります。以下の商品はこれらの条件を満たすおすすめのフロートです。
ナイフ
魚突きではナイフを携帯することが一般的で、シース(さや)に収納できるタイプを使用します。身に付ける場所は人それぞれですが、太ももやふくらはぎにシースを巻き付けて使用する突き師が多いようです。
大きすぎたり、小さすぎると扱いづらくなってしまうので、全長が20~25cm程度のものを選びましょう。以下のナイフはシースもしっかりしていて、大きさも丁度よくおすすめのナイフです。
フィン
ダイビングと同様に魚突きでもフィンを使用します。フィンがあることで、深く潜る際の負担が軽減されるため、魚突きを快適に楽しむことができます。初心者のうちは短くて柔らかいフィンにしましょう。以下の商品はいずれも満たし、価格も安いのでおすすめです。
また、ダイビングが得意ではなく、最初のうちは浅瀬で魚突きをする方であればフィンは不要です。ですが、ウニや岩礁などを踏んでケガをする恐れもあるため、以下のようなマリンシューズを用意しておきましょう。
ウェットスーツ&ウエイトベルト
夏以外で魚突きをするならウェットスーツが必須になります。冷たい海水でも体温を逃がさない仕組みになっているので、皆さんが想像するより寒くない状態で魚突きが楽しめます。
ウェットスーツは防寒対策だけでなく、毒のある生物や海藻類から身を守り、岩礁やテトラとの接触によるケガを防止してくれます。また、ウェットスーツには浮力があるため、いざというときに救命具として使えるアイテムです。
ウェットスーツはサイズや厚さがメーカーによってまちまちなので、まずは安いウェットスーツから試してみましょう。以下の商品は1.5mm、3mm、5mmと厚みのバリエーションがあり、比較的安価で購入できるためおすすめです。
また、ウェットスーツを購入する場合は以下のようなダイビングソックスを購入する必要があります。
ウェットスーツには浮力があり、そのままでは深く潜ることができません。そのため、ウエイトを身に付けることで浮力の調整をします。ウエイトはウェットスーツの厚さにもよりますが、2~6kgのウエイトを用意しておけば間違いないでしょう。
ウエイトは左右対称の重さで身に着けるのが基本なので、1kgと2kgのウエイトを2つずつ用意しておきましょう。以下の商品は欲しいウエイトの重さと個数を選択でき、ベルトもセットになっているのでおすすめです。
ライト
暗い場所(岩の下やテトラの隙間など)を覗いたり、夜中に魚突きをする場合はライトを用意しておきましょう。魚突きで使用するライトはダイビング用のライトと同じもので問題ありません。
ライトを選ぶ際のポイントは防水機能と明るさです。最低でも20m程度の深度に対応できる防水性で、明るさは1000ルーメン(明るさの単位)以上が求めらます。以下の商品は防水性と明るさの条件を満たすだけでなく、小型で扱いやすいためおすすめです。
また、ライトを手に持ったまま魚突きをすると片手が塞がってしまうため、以下のようなライトホルダーも準備しておくとよいでしょう。
腕時計(ダイブコンピューター)
ダイビング用の腕時計(ダイブコンピューター)を魚突できも使用します。ダイブコンピューターがあることで、魚突きをより楽しむことができるため、お金に余裕がある方は是非、購入してみてください。
ダイコンの魅力は水深や潜水時間を計測できることです。どの程度まで潜れるようになったかが確認できると、モチベーションが高まります。少し高額ですが、その中でも以下の商品は比較的安いのでおすすめです。
魚突き(スピアフィッシング)ができる場所・ポイントの探し方
魚突きは情報の拡散による乱獲を防止するため、 特定の場所を言ってはいけない暗黙のルールがあったりします。なので、魚突きができる場所に関する情報はネット上でもあまり掲載されていません。
この状況だと、これから魚突きを始める方がどこでしていいか分からないと思うので、この章では魚突きができる場所を探す方法・手順について紹介します。
使用できる漁具・漁法を確認
使用できる漁具・漁法は、各都道府県の漁業調整規則で定められています。その情報をまとめた表が、水産庁の公式ページに掲載されています。 ※以下、一部抜粋
まず魚突きをする予定の都道府県で「やす(もり類を除く)」が許可されているか確認します。ちなみに、ゴム等を用いて発射・投射するのが「銛(モリ)」、しないのが「やす」です。
「やす」が許可されていない都道府県で、「銛(モリ)」が許可されることはないと推測できるので、最初は「やす」が使用できるかどうかを確認します。
銛(モリ)が使用できるかを確認
「やす」ではなく「銛(モリ)」が使用できるかどうかは、各都道府県の遊漁に係るお問い合わせ窓口で確認します。
電話をする際は以下を伝えると話がスムーズです。
① 魚突きをする予定の地域
② 漁具がゴムで発射・投射する銛(モリ)であること
※問い合わせ先は以下となります。
同時に、魚突きをする地名(具体的な場所の名前など)と合わせて、「魚突き」、「銛突き(モリ突き)」で検索し、少しでも情報が掲載されているかどうかをチェックしておきましょう。
海辺の立て看板等を確認
魚突きをする前に海辺を散策して、禁止事項等が書かれた看板を探します。そこで採捕してはいけない魚貝藻類を確認しておきましょう。
看板は以下のような感じで掲示されてたりします。
他の人が魚突きをしてるか確認
現地で自分以外に魚突きをしている人がいるか確認します。魚突きをしている人が他にいた場合、可能なら話かけて魚突きができる場所かどうかを聞いてみましょう。(もしかしたら漁師の方かもしれません)
漁業協同組合(漁師)の人へ直接確認
浜辺の見回りや、漁港での出船準備だったりで地元の漁師さんと顔を合わせる機会があります。 魚突きをするにあたり、漁師さんへの対応は非常に重要です。
その際、魚突きができる場所かどうかの確認もそうですが、自分の目的が密漁でないことをしっかり伝えておきましょう。具体的には「アワビやサザエはとる気がない」といった感じです。
そうすることで、後々の漁師さんとのトラブルを防ぐことができます。
魚突き(スピアフィッシング)の最適な時期・時間
魚突きを始める時期は「夏」が最適です。その理由は、防寒対策が不要で快適に魚突きができるからです。魚突きは、春・秋・冬でも可能ですが、初心者には少しハードルが高いので、まずは夏から始めましょう。
時間帯は日中が最適です。夜中は水難事故に遭う危険だけでなく、密漁と間違えられるリスクがあります。朝夕は漁船の通過が多く追突事故の恐れがあります。特に夕方は日が落ちると漁船がこちらを見落としやすくなるので、避けた方が無難です。
魚突き(スピアフィッシング)での違法行為・禁止事項
法令や規則に従い実施する魚突きは合法です。これらに反して魚突きをした場合、密漁(漁業権侵害などの違法行為)とみなされ、懲役や罰金に処されることがあります。
ここでは魚突きで自分が犯罪者にならないために、覚えておくべきルール(法律や条例など)を紹介します。
魚突きが規制される理由
海はだれのものでもないですが、遊漁における秩序を保つため、魚突きは各法令等で規制されています。 ※遊漁:漁師以外の一般人がする漁
この様なルールがないと、一般の遊漁者が魚貝藻類を無制限にとってしまい、漁場の水産資源が枯渇し、地元で漁業を営み生計を立てている漁師さんの生活が脅かされてしまいます。
また、一部の遊漁者に水産資源を独占されてしまった場合、水産物を一般市場へ安定的に提供することが難しくなります。
これらの理由から、水産資源に対しては様々なルールが決められており、魚突きもこれに準ずる必要があるとされています。
漁業法による規制
漁業法は漁業の発展を目的とする法律です。漁業権や漁業調査委員会等に関する条文が定められています。簡単にいうと、漁業を誰にどこまでやらせるかを定めたルールのことです。
漁業権
漁業権は漁場で特定の漁業を占有(排他的)して営む権利です。簡単にいうと、遊漁者や他の漁師に好き勝手させないための権利です。漁業権は以下の3種類があります。
定置漁業権 :大型定置漁業を営む権利
区画漁業権 :魚貝藻類の養殖などで、 一定の区域における養殖業を営む権利
共同漁業権 :漁場を地元の漁師が共同で利用し漁業を営む権利
魚突きをするうえで、最も関係が深いのは共同漁業権になります。共同漁業権が設定されたエリアでは、採捕ルールに従い魚突きをしなければなりません。一般的な事例は第一種共同漁業権で、以下の採捕を禁止しています。
漁業調整委員会の指示
漁業調整委員会とは、漁業に関する処理にあたる行政委員会です。その中で、漁業者の代表や学識経験者等で構成される組織を海区漁業調整委員会といい、水産動植物の繁殖保護などのために、遊漁者の採捕等に関して指示することができます。
つまり、漁場によっては何らかの理由 (動植物の繁殖保護など) で遊漁者に対し魚突きの制限が増えるケースもあるということです。
その他の規制
水産資源保護法による規制
漁場の水産資源を保護培養し、その効果を維持することで漁業の発展に寄与するための法律です。例えば、「採捕するにあたり爆発物や有毒物を使用してはならない」などの制限があります。
また、稚魚育成のために水産動植物の採捕を制限するケースもあります。
瀬戸内海漁業取締規則による規制
瀬戸内海に限り、毎年7月1日~9月30日までの期間、全長 12cm以下 (口の先から尾鰭の先端まで)の真鯛を採捕することが禁止されています。
都道府県漁業調整規則による規制
漁業法や水産資源保護法に基づき、各都道府県で定められた漁業に関する規則です。魚突きにおいては漁具・漁法だけでなく、体長に関しても制限されている地域があるため、事前に確認しておきましょう。
ちなみに、『東京都 [対象の都道府県] 漁業調整規則』で検索すると確認できます。
採捕の自主規制
法令の規制以外に、漁場を利用する漁業者や遊漁者等で組織された団体が、自主的に操業方法や体長制限等を取り決めている場合があります。その中でも、法律に基づき都道府県知事に届出がなされ、認定を受けているもの等もあります。
ちなみに、以下のような自主規制があります。
・ 漁場利用協定(沿岸漁場整備開発法)
漁場を安定利用するために、操業区域や操業時間などを取り決めた協定
・ 資源管理協定(海洋水産資源開発促進法)
資源を適切に管理するため、自主的に制限(魚種、体長、禁止区域、禁止期間等)を定めている協定
・ 資源管理規程(水産業協同組合法)
漁協が一定の海域で採捕の方法や期間、体長等の制限を適切に管理するために、組合員が順守すべき事項を定めた規定
魚突き(スピアフィッシング)で獲れる魚の種類
これから魚突きを始める方にとっては、どの様な魚が突けるのか気になりますよね。そんな方のために、魚突きで獲れる一般的な魚の種類について紹介していきます。
鯛(タイ)
鯛(タイ)は白身の代表的な魚で、日本では高級魚とされています。ひれの棘が固く、捌くときは注意が必要です。刺身や鯛めしなどの他に、分厚い皮を活かした「湯引き」といった料理で美味しくいただけます。
鯛にはいくつか種類があり、市場でよく見るのは淡いピンク色をした真鯛(マダイ)ですが、魚突きでは黒鯛(クロダイ)や石鯛(イシダイ)といった日常生活ではあまり目にしない鯛を突くことができます。
鰤(ブリ)
鰤(ブリ)は回遊魚の一種で、大きいものだと体調が1m(8kg前後)ほどにもなります。魚突きでは目の前を通過するなど、運が良いときに獲れることがあります。料理では刺身、煮付け、照り焼きにすることが多く、熟成させることで味も変わります。
鰤は出世魚で、成長によって名前が変わる魚です。呼び方は地方によって異なりますが、幼魚はワカシ、若魚はイナダ・ワラサ、成魚がブリとなります。よく間違えられますが、カンパチやヒラマサとは魚種が異なります。
鮃(ヒラメ)
鮃(ヒラメ)は薄い魚体をした少し変わった魚です。腹部を下にしたとき頭が左側に来るのが特徴で、鰈(カレイ)との見分け方にもなります。白身魚で刺身や煮付け、ムニエルでも美味しく、えんがわについてはこりこりの触感がたまらなく美味です。
砂地に隠れていることや、岩礁と同化していることが多いため、探しにくく最初は突くのが難しい魚かもしれません。サイズは40~100cm程度で、それ以下のサイズは「ソゲ」と呼ばれます。
メバル
メバルは根魚の一種で、岩礁や海藻の陰に隠れていることが多い魚です。大きさは20~30cm程度で、料理は煮付けがメインになります。目が大きく真ん丸になっているのが特徴です。
魚突きでは比較的獲りやすい魚で、最初のうちはメバルが目標になるかもしれません。メバルには3つの種類があり、写真のクロメバルだけでなく、シロメバルやアカメバルなどがいます。
ソイ
見た目は少しゴツい感じですが、メバルと同じ部類(メバル属)の魚で、白身の繊細な味はメバルとそこまで変わりません。写真はムラソイと呼ばれるソイの一種で、その他にもクロソイや真ソイ、シマゾイといった種類がいます。
カサゴ
カサゴは地方によってガシラ、ガラカブと呼んだりします。メバルに似ていますが、目の大きさや斑模様で見分けることができます。体長は20~30cmが多く、タンパクな白身魚で塩焼きや唐揚げなどシンプルな料理がおすすめです。